みなさんこんにちは 重田勝介です 今週の講義では オープンエデュケーションの背景 その中でも、まずは理念的側面について解説をしたい と思います この講義の学習目標は、こちらの2つです 1つ目は オープンエデュケーションが広まる背景について 説明できること もう1つは、オープンエデュケーションの活動を支える 理念的側面について説明できることです オープンエデュケーションの活動が ここまでご紹介してきたように広まる背景には いくつかの理由がありますが 大きく分けて、私は2つの側面があると考えています 1つが こちらの理念的側面です つまり、オープンエデュケーションが 社会貢献活動として また、ある種教育機関の使命として 認識されて推進されていると いう一面 もう1つは 実利的側面です つまり、オープンエデュケーションの活動に取り組むことが 教育機関にとって様々なメリットをもたらしている 例えば 大学の広報ですとか、教育の改善に役立つということも あるわけです そのような背景の中で 大学がオープンエデュケーションに戦略的に取り組んでいる という面もあります この2つのポイントに分けて説明をします まずはこの講義では この中の理念的側面について解説をします 理念的側面の1つ目は 教育機会の拡大です これまで、教育を受けるためには 何らかの対価を払う必要がありました これは第1週目の講義でも解説したところですが 例えば教材や教科書を買う時には 必ずお金を払う必要があったと いうことがあるんですけども オープンエデュケーションも様々な活動によって この自学自習を進める時に ハードルが下がる、つまり教材や教育機会を無償で 手にすることができるようになったということです これは日本にいると、まだなかなか 想像しにくいんですが 世界の中の一部の国 例えば、一部の発展途上国ですとか一部の地域では 教材や教具が十分に行き渡っていないという ある種の教育格差が存在していることも事実です こういう中で、教育へのアクセスを容易にする ためにオープンエデュケーションを役立てるということが 考えられています 2つ目の側面です こちらはですね例えば先程のような 教育格差が存在しているということを ある意味背景としまして、このアジア・アフリカ諸国において ですね オープンコースウェアを現地の言葉に翻訳して使うという 取り組みも行われています つまりこのような教材を 教師教育ですとか 自学自習の教材に役立てているということです この時にひとつ問題となるのが ネットワークなんですね。と言いますのが 例えば、マサチューセッツ工科大学の 教材を翻訳してそれを配信するという時に そのデータがアメリカにあると、発展途上国から かなり長い経路を通過して 教材を見にいかないといけないと こういうふうなことがあったりします この時に、この通信回線の帯域は問題に ならないようにですね サーバーを色んな所に設置すると ある種のミラーサーバーとも呼ばれますが こういうものを発展途上国の中に設置して できるだけその快適な環境で教材にアクセスできるようにと いう工夫も一部で行われています OCWの場合は、OCW-in-a-Boxという というふうなものが開発されて こういうミラーサーバーを発展途上国に置く という取り組みもあります また このオープンエデュケーションの活動によって この教科書代を下げるということも可能なわけですね つまり、蓄積されたオープン教材を使って大学向けの 教科書を制作すると こういうふうなプロジェクトは、例えばアメリカですとユタ州や カリフォルニア州で行われています こういう教科書のことをOpen Textbook オープン教科書とも呼びます これは、このオープンコースウェアやOERを基にした 教科書で こういうものを無償で生徒に配布すると それが電子媒体のこともありますし、場合によると いくらかのお金を払ってですね セルフ印刷をするということもできます 事例として、このセイラー財団の取り組みをご紹介しますが セイラー財団はですね、これまでに至るまで 270科目以上のオープン教科書を公開しています それだけではなくて オンライン大学のExcelsior Collegeと 提携をしまして その大学で教科書を使って学士号を取得できると つまり教科書代を非常に下げた状態で 学士号が取れると、そういうふうな取り組みを オンライン大学と連携して行なっているんですね このような オープン教材を学校や大学教育にある意味適用していく 導入していく こういうふうなAdoptionといわれる活動はここ最近米国 や発展途上国で非常に盛んになっています 3つ目の理念的側面が、多様な学習者に適した教育 機会を提供するということです いわゆる生涯学習というものはですね、社会に出た後 においても 何か自分の専門性を身に付けるためにを学ぶと そのことによって専門性を身に付けたり新たな専門性を また取得すると、そういうふうなことは可能なわけです けれども 現代社会においては この生涯学習に非常に大きなポテンシャルがあると 考えられます つまり 大学を卒業して社会で働いてるその中ででもですね 新たな専門性を身につけ高めることで自分のキャリア を築くということです このキャリアという言葉は色々な定義がありますが ここでは このHALLらによりますとですね一生涯に渡る仕事に 関連した経験や活動というふうに定義します つまりこういうものを築くために 大学に通うそれによって専門性を身に付けるということも 選択肢としてあるのですが経済的や時間的になかなか 難しいということが現状だと思います この時に、オープンエデュケーションの活動によって 作られた教材や教育環境を使って 新しい生涯学習のチャンスを作っていこうということが 可能なわけです もう1つの理念的側面は 大学の責務としてのオープン化というふうに言えるかと 思います つまりこれまで大学はですね キャンパスというある意味閉じられた学習環境中で 高等教育を培うということをやってきたわけですけども このような大学教育へのある種のアクセスを改善する 方法としてオープンエデュケーションが使える ということです つまり大学では 日々ですね様々な研究活動が行われているわけですが こういうものを社会に還元していくと また大学そのものもある意味 大学が運営するための収入の大きい部分をですね 国や地方自治体からの補助金に頼っているという 現状があります つまり、社会からの支えというのが大学にとっては 不可欠でありますので そのような大学が何か社会に対して還元をしていく必要が あるのではないかというふうな 問題意識があるわけです そのように大学の中で培われた知というのをですね 社会還元する方法のひとつとしてあり得るのが 教材を社会にオープンにすると いうことです つまり、大学の教材といいますのは ある種その大学で培われた知を 凝縮したものというかその成果物そのものですから そういうものをオープンにしていく もしくはそういうものを使った 公開講座 これはまさにMOOCのことだと思いますけども そのようなことが大学が 取り得る方法としてあるわけですね このようにすることが 社会からの大きな支援で成り立っている大学の アカウンタビリティ 当事者責任を果たすことにもつながるわけです このような図で今のような大学の責務というか活動は 説明できるかと思います つまり、大学というのはですね ひとつの土壌の上で 研究や教育を進めているわけですが その中に教材というものがその知的活動の成果として 結実するわけです そういうものを社会に還元していくと そのことによって社会の中に大学の知が 広まる この広まった知がですね、この社会の中で使われるもしくは 大学のある種の魅力として発見されることで これが社会にまた 社会から大学に還流していく つまり、例えば大学に通ってみたいと思うであるとか 大学が当事者責任を果たしていくということが社会から 認められると そういうふうなある種の知のサイクルみたいなもの ができる こういうことに大学のオープンエデュケーションの活動という のは 繋がっているのではないかというふうに考えます