この講義では オープンエデュケーションの背景の中でも 実利的側面について 解説をしたいと思います この講義の目標は以下の3つです 1つ目が オープンエデュケーションが広まる背景について 説明できること もう1つは、 オープンエデュケーションの活動を支える実利的側面に ついて説明できること また、この様なオープンエデュケーションの活動が 社会の中でどの様に支えられているのかを 説明できることです オープンエデュケーションが社会の中で推進 される 実利的側面として 1つがこのような活動を担っている ひとつの主体である大学 大学経営への効果というものもある かと思います つまり オープンエデュケーションの活動を大学がすることで 大学の学生募集などに 効果があるということですね と言いますのも 例えばオープンコースウェアや MOOCで 大学の教材を公開するということは 大学に入学していない所属していない人にとっても ですね大学教育の 今何を教えているか、どういう教員がいるかということを 知ることができると つまり、例えばそういう方が将来的に大学に入ると 考えた時に 大学教育を 予期的に知ることができるということなんですね そういうふうな媒体として 大学が公開しているオープン教材や、大学が運営する MOOCというものが位置づくと いうことです こういう効果について、実際調査をしている事例もあります それがこちらのマサチューセッツ工科大学の ものです マサチューセッツ工科大学は MIT OCWを長年に渡って運営していますが その効果についても調査をしています その中で、入学者に対して調査をしたところ 入学者のうちに OCWの存在を知っていると それを前提の下で かつ、そのOCWを見たということが 大学を選んだ ことに大きいインパクトがあったと答えた学生というのが 27%もいたということですね 日本においてはなかなか大学の入学者がOCWを知っている ということもまだまだ少ないですが それを知っている学生がまずこれだけいて かつ、これだけの割合の学生が 実際それが意味があったと言っているというのは非常に 大きい意味があるかなと思います つまり、その大学に対するリクルーティングの効果というのが 期待できるという ことなんですね 次の実利的側面は MOOCによる学生募集ということです これは1つ目の実利的側面と関係をしますが 今度、MOOCをするということになりますと大学は 教材を公開するだけではなく 実際にオンラインで教育を行なえると このことによって 大学は 優秀な学生を世界中から探すことができるんですね と言いますのも、例えばオープンコースウェアで 教材を公開していると そのような取り組みを仮にしたとしても大学にとっては 例えばアクセスログなどから どういう国からどれくらいの人がアクセスしているという ふうな大まかな情報しか見ることが出来ません しかし、MOOCを開講した場合には 学生が自分のアカウントを作って そして受講者はそれぞれそのアカウントを使って MOOCを受けにくることになるので それぞれの受講者が どれぐらいの成績かと またどこに住んでいるかと そういう細かいデータまで追うことができると このような事例でひとつ顕著なものとして挙げられるのが これは日本でも若干有名になりましたが MITxを 受けたモンゴルの少年という話ですね この少年はモンゴルに住んでいて 10歳代中頃だったと思います けれども MITxを受講していたと MITは学生の受講成績を調べている 時に 非常に優秀な学生がモンゴルにいるところを 発見したと 最終的にMITはそのモンゴルの学生に奨学金 を出してMITに入学をさせたんですね つまり、これまで 普通の大学のリクルーティングですとか、募集ではなかな 見つけることができなかったような学生を大学が見つける ことができました それと同時にや発展途上国にいる なかなか 大学に通うというチャンスを掴むことが難しい 学生にとってもこのような所で良い成績をあげるということが 自分の能力をある意味世間に示すというふうな 機会になったということもあるわけですね このようにその大学はMOOCを 開講することで その受講者がどこから受けているか、居住地域 ですとか属性を把握できる こういうことがありますので、このようなある意味仕組みを 使ってMOOCを教育のある種、機会提供という だけではなくて 積極的なリクルーティングのツールに使えるという もう一面もあるわけです 次に挙げられるのが教育コストの削減と 質向上です これは、オープン教材先程のオープン教科書でも 説明をした通り このようなものを教育に使うことによって 教科書代を下げると いう事ができます つまり電子教科書を 紙の教科書の代わりに提供することで、例えば 電子教科書の発行数が増えれば 流通コストをかなり下げることはできますから それによって教科書を安価に提供することが できるだろうということです 実際に米国では コーネル大学やUCバークレーが 連携をして 出版社と交渉して電子教科書を安く仕入れる というふうな取り組みを 実験的に行なっています また、オープンな教科書をユタ州では学生に 配布している取り組みもありますし カリフォルニア州の一部のカレッジでは オープン教科書を学生が自由に組み合わせてそれを 自分の教科書として作ることができるそういうふうな仕組みを 提供するという事例もあります また、このような教材を使いながらオンライン大学で 大学の単位を取得することもできると これは以前の講義でもご紹介しました ウェスタン・ガバナーズ・ユニバーシティは その例だと思います つまり、教材にOERオープン教材を使うことで 教育のコストを下げると いうふうなことが可能になるわけですね こういう中でひとつ注目されている教育方法 というのが この反転授業Flipped Classroomです 反転授業といいますのは これまでの復習中心であった授業形態 ではなく 予習中心の授業形態に変えていくと つまり知識習得を教室に来る前に 済ませてしまうと この時に オンラインにおかれたビデオ教材や様々な 教材を使って 教室に来る前に知識習得を済ませておくと いうことですね 教室に来た後には、知識の確認ですとか知識を 使うような活動、例えばグループ学習・制作活動 ディスカッションなどを行うことによって 学習の効果を高めようというコンセプトです この反転授業を導入することによって ドロップアウトを低減する つまり、学生の履修率を高める効果ですとか これは一部の大学においては履修期間を縮めるという効果も 出ています このような反転授業を始める時にどうしても問題となるのが では、この知識習得をするためのオンライン教材を どう用意するかということなんですね 最近ではいくつかの学校や大学でこの反転授業を 導入するということが 徐々に進んでいますが まだ多くの事例では 先生方が 自前のアプリケーションなどを使って教材を作るということを やっています この負担がどうしても大きくなるという問題が あるんですね これに対して例えばオープン教材 ですとかMOOCで提供されている教材を そのまま反転授業に導入するというふうにすれば この教材を用意するというとこのハードルが下がる わけです このことによって、例えば反転授業のような学習効果が 高いと思われる 教育手法を より容易に教育現場に導入することが できるようになると いうふうな側面もあります このようにですね、OERやMOOCを使った大学教育改善 というのが 可能になるわけです 例えば、米国ですとカーネギーメロン大学の オープンラーニング・イニシアチブと これは、第1週目で紹介した事例ですが こういうふうな取り組みの中で オンライン教材を使って教育効果を高めるというふうな ことが研究よって実証されています 最近ですと、この教材をカーネギーメロン大学の中 だけではなくて、例えばコミュニティカレッジで 使うと これをCC-OLIというふうに呼ぶんですがこのように よりスケールを持ってオンライン教材を活用していこうと いうふうな取り組みも進んでます また、これはMOOCの会でご紹介しましたが サンノゼ州立大学では edxやUdacityを使った反転授業を 実施している 例えば、SJSU Plusもその一例かもし ません またedxについてはコミュニティカレッジで edx上の教材を使うと 例えばMITxのプログラミング教材を反転授業 に使うというような授業も開講されています こういうふうな取り組みをすることが修了率の向上ですとか 履修期間の短縮などの効果につながっているというふうな 研究成果も上がっているわけです