この講義では、社会課題に応えるオープンエデュケーションと 題して オープンエデュケーションが社会の中のどういうふうな 教育に関する問題に応えて それがどのような支えのもとで進められているのか ということについて 解説をしたいと思います この講義の学習目標は こちらです 大学や社会における課題と 解決手法としてのオープンエデュケーションの意義について 説明できるということです ここまで、オープンエデュケーションの背景 ということで オープンエデュケーションのもつ理念的側面と実利的側面という 内容について解説をしてきましたが この実利的側面の部分に若干関係はあるんですけども 実はオープンエデュケーションの活動 というものがですね 大学の抱える課題に対する対応になっている というふうな部分がある ということなんです 現在、大学が社会の中でどういう状況におかれている かと言いますと、まずひとつ言えることが大学卒の 人材ニーズの急増です つまり、先進国においては 成人の大学卒人口というのはまだ3分の1程度 なんですね その中で、例えば近年日本でも 知識基盤社会への移行と言われるとおり このような 知識を上手に活用しながら働くと このような人材が求められていると この中で大学卒の人材ニーズが増えていることは確かです また、発展途上国においては 非常に若年人口は爆発的に増えていますので このような状況に対応できるように例えば大学を作って いくということ自体非常に難しいという状況があります 例えば、これは南米のブラジルの例なんですが 南米ではですね 現代の若年人口の増え方を想定すると 年間に4つ新しい大学を作らないといけないと 言われていると こういうことは財政的にも物理的にも非常に難しいですね なのである種、その代替手段として オンライン教育を使っていこうと いうふうな 解決手法が考えられるわけです もうひとつ現代の大学、高等教育そのものが抱えている 課題が こちらにある 「非伝統的」な学生の増加です 「非伝統的」な学生といいますのは それに対する伝統的学生な学生、私自身もそうだったんですが 小学校、中学校、高校と出て そのまま大学に入り大学を卒業して就職すると つまり、大学生活の中では大学教育に 基本的に100%従事できるという学生のことです それに対して 例えば社会人入学をする もしくは働き、家族を養いながら学ぶとこのようなことを している学生というのが増えてきている このようなものを「非伝統的」な学生 というふうに呼びます このような学生が抱えてしまう課題としては ドロップアウトの増加ということなんですね つまり 大学の教育に100%従事して 学ぶというのはなかなか難しいので 大学で設定されたこれまでのカリキュラムについていくことが なかなか難しいと 例えばこれは米国の例ですけど 「非伝統的」な学生の修了率が非常に低いということが 社会問題にもなっています つまり、従来の大学の教育制度 教え方、学生の学び方の想定に限界がきていると いうふうな問題意識もあるわけです またその大学そのものも 持続性について懸念がもたれています と言いますのも、近年特に公立の大学なんですが 大学に対する補助金が削減されているという 状況があります これは主に2008年のリーマンショック以降の状況 なのですが、州政府の財政が悪化したことによって 大学に対する補助金が削減されたと それによって、米国の公立大学の財政が悪化し 学費が高騰していると つまり、補助金が減ったところを学費で補わないといけない という状況になっているわけですね こういう中で 大学の中の教育サービスも減らさないといけないと いうふうなことを検討されたりですとか 近年大学ではですね、例えばLMS ラーニングマネジメントシステム ですとか 学生が使うPCや 携帯電話が接続する無線LANもその様々なテクノロジーを 用意する必要がありますので それに対する別途の料金を徴収するというようなことも されています つまり、こういう中で 学生の負担が徐々に上がっているというふうな現状 があるわけです 米国にもですね、日本と同じように奨学金制度というものが あるんですが これが十分に機能していないということも 特にアメリカにおいては社会問題になっています 例えば、学生1人あたりが卒業時に抱える借金というのが 平均で2万6000ドルと 非常に高額だということなんですね もちろん政府による奨学金、これはペルグランドと言いますが こういうものが支給されるんですが それでもカバーしきれないほどの ある意味に借金を抱えて卒業すると かつ、特にここ数年は雇用情勢も良くないので 例えばそこで就職できないとなりますと、借金を抱えたまま 大学を卒業して、かつ就職にも困るとなりますと 生活が非常に困窮するということで 実際これまで大学に通い卒業することが 社会的成功につながるというふうに特に米国で見なされて いたんですけども そういうものが成り立たなくなっているという いうことが社会問題として世の中に認識されてきている とこういう状況もあるわけですね この中で 社会が支えるオープンエデュケーション、つまり 社会がオープンエデュケーションを活用することで 社会課題に応えていこうという動きがあるわけです これに応えているひとつの主体が寄付財団です 例えばヒューレット財団・ゲイツ財団・ セイラー財団、様々なものがありますが このような財団がですね 社会貢献事業の一環として 十数億ドル規模を調達し 大学や非営利団体のオープン化事業を 支援しているということです なお、非常に特徴的なのが 大学がオープンエデュケーションの活動を、例えば オープンコースウェア含めて様々取り組んでいるんですけども 特に米国においては、大学が自前の資金でやっているわけでは ないんですね もちろん大学も一部の人件費などを支出していることは 確かなんですが 大学はそのような寄付財団の支援を受けて 活動の媒体となって機能をしているという ここが、日本や一部のアジア諸国のような 自前資金を前提としているオープンエデュケーションの活動 との大きな違いだと思います また、このようなオープンエデュケーションの活動を 支えているのは寄付財団に限りません 例えば政府ですね 米国においてですと、労働省が最近オープン教材の 制作・普及に かなりの 投資を始めています と言いますのも、米国の場合はですね 高等教育は基本的に 各州に委ねられていますので それに対して、日本の文部科学省にあたるような 教育省が何かをするということは 基本的にないんですね その代わり このようなオープンエデュケーションの活動が、生涯学習 労働者の再教育に続くという考え方から 労働省が このオープンエデュケーションの活動を支援していると いうふうな背景があります つまり、社会人の再教育にオープンエデュケーションを上手に使っていくと 例えば、ひとつの例がこのTAACCCTというものです これは、コミュニティーカレッジの中で労働者の再教育をして いきましょうと その中に、OERオープン教材を使ってより質の高い教材 もしくは その時の社会ニーズに応えるような教材を作っていって より専門家 もしくは専門性を育成できるような教育をしていこうという 取り組みなんですね このようなものは 米国に限りませんで、アジアやアフリカ あと南アメリカ あと、南アフリカなにかもありますけども 教育機会の不足を補う手段として オープン教材を提供し、教師教育もしくは 大学や学校の学びに繋げていると このような状況があります