この講義では オープンエデュケーションの課題について取り上げたい と思います その中でも オープン教材OERに関することについて解説を したいと思います この講義の学習目標はこちらの2つです 1つ目が オープンエデュケーションの活動が抱える課題について 説明できること もう1つは オープン教材の 制作・公開・利用 に関する課題について 説明ができることです これまで、オープンコースウェアをはじめとして様々な オープン教材制作の取り組みを紹介して きましたが 課題としてあるのが なかなかこういう教材制作が難しいということなんですね そのひとつとして挙げられるのが 教材の質と量の確保です つまり、例えばオープン教材を使って様々な教育をすると なれば 色々な分野についての教材が潤沢に用意されている 必要があります 例えば 英語教材ですとこれが比較的潤沢になっているという現状 があると つまり、このMIT OCWの例などを挙げられる と思うんですが、MIT OCWは2007年にですね 開講されているすべての講義について 基本的に教材が公開し終わりました 現在は その教材を 常に新しく更新しているということを続けているわけ ですが このようなある意味素地があることで これを2次利用して様々なオープン教材が作られて いるという現状があるわけです また、教材の品質を確保する仕組みというのもいくつか 整備されています 例えば 第1週目の講義で紹介した Connexionsのレンズシステム つまり大学や アイトリプルイー(IEEE)などの機関がですね 教材が蓄積されたリポジトリ(格納場所)の中で より優れたものをピックアップしていく 仕組みであるとか またはMERLOTのピアレビューの仕組みなどもそうかも そうかもしれません ただ問題が、英語以外の教材がまだまだ足りないという 状況なんですね これは、我が国における状況にも当てはまります つまり、日本においてはですね 教材もしくはその教育制度を使って 教育を制度の中できちんとしていくということが ある程度確立されていると また、その教育コストの高騰というのも 例えば米国など一部の先進国の中で 社会問題化しているほど まだ高くはないということなんですね このように、まだ既存の教育制度が もちろん奨学金の問題も含め いろいろな問題が顕在化しつつはあるのですが まだまだ 非常に大きい問題というには比較的至っていない ということが このような教材を整備していこうというところの 後押しの強さにどうしても欠けてしまうという部分 があるのかなというふうに考えています 2つ目の課題が オープン教材の著作権です 第1週目の講義でも解説をした通り オープン教材 OERというのは 再利用が推奨されるわけですね つまり、ひとつの教材を様々な用途に向けて作り変えていく この時に 例えばクリエイティブ・コモンズ・ライセンスのような 二次利用の方法の制限について きちんと示した 表示システムが あることで再利用が促されているという 現状もあります しかしですね このような二次利用の許可というのをオープン教材に 付与するのは 決して簡単なことではありません これは、日本における状況だけではなく世界的に 言えることなのですが 例えば 教材の中で新聞記事や図書を紹介する つまり、著作権をほかの著作権者が持っているような 著作物を組み入れるときに それを二次利用する条件をつけて公開したいんですけど というふうな 申し出は、大抵の場合許可されないんですね また例えば、いくつかそのような著作物を組み入れた 教材を作る時に その教材の作り手はそれぞれの著作者に対して 「これをこういう用途に教材として使ってよろしいでしょうか」 というふうに ひとつひとつ問い合わせる必要があり、これが非常に 手間になっている いうことです 一方ですね、米国においては「フェアユース法」というのが ありまして 教育ですとか、批評いくつかの目的については著作物を 使ってもよいというような法律があるんですが 日本においてはこのような法律がないんですね なので、こういうふうな法整備の部分が不十分であると いうことも課題になっています 次の課題が、電子教科書の普及です 先ほど申し上げたとおり電子教科書が普及することで 教育コストを下げられるのではないかと いうふうなこと、可能性があるんですが なかなかこれにも限界があると つまり 例えば電子教科書を使うとなると それを閲覧するためのPCやタブレット が必要だと またそのネットワークを整備することにも追加コストが 必要だと思います このような追加コストというのが学校だけではなくて 家庭にもかってくるということですね また、大学生に対する調査では まだまだ学生は紙の教科書を好んでいるというふうな 結果もあります また、電子教科書の品揃え自身も まだまだ不十分であって 使い勝手もやはりまだ不満があると いう状況もあるようです こういう中で、コストを下げる可能性がある電子教科書 この普及を考えた時には 電子教科書をさらにコストを下げていくことが 望まれるでしょう このような状況はですね 例えば音楽業界や出版業界で これまで蓄積されてきたモデルがあります 例えばiTunes Storeですとか Amazonですとかそういうふうな ひとつ大きいポータルがあってその中で電子媒体で 提供される音楽や出版物をできるだけ安価に提供している もしくはその小売をしていくっていうことですねそのこと によって価格を下げたという事例があります このような価格面もしくは使い勝手を含めたその機能面ですね こういうところの長所を伸ばすということが 電子教科書の普及には欠かせないのかなと いうふうに考えます もう1つが、オープン教材の検索性というものです これも、第1週目の講義で解説をしましたが オープンエデュケーションの活動の特徴のひとつが オープン教材を 分類・統合・検索できるウェブサイトでした このようなものがあることで学習者は自分の 目的に合った教材を探すことができるわけなんです しかし現状起きていることというのは このようなウェブサイトが非常にたくさんあると かつ、横断的に検索することはできないんですね また教材を検索する時に 例えば、学年例えばレベル様々な内容の項目で 検索をしたいというふうなニーズもあるんですが そういうことに使われるいわゆるメタデータという ものも開発もまだまだ十分でないという ところがあります 押しなべて申し上げると、つまりオープン教材の検索性 ディスカバリビリティと言いますが これが不足しているということなんですね つまり インターネット上に 様々な教材が蓄積されてきたけども適切な教材を 探すことに時間がかかる、難しい そうなれば どうしても出版されていてこれまで使っている教科書の方を 選んだほうが早いということになるわけです これについてはこのようなウェブサイトを例えば 横断検索できるような 様々な工夫ですとか このようなオープン教材を提供する側自体が 上手に連携をしていく、みたいなことが望まれると 思われます もう1つは オープン教材を扱うデバイスの問題です オープン教材を閲覧するには、PCやタブレットなどが 必要でその価格ももちろん問題になるんですが そういうものをどういうふうに入手するかと どう維持するかというところも負担になってきます つまり、これは先ほど解説をしたとおり購入のための 初期投資は不可欠なんですが 例えばそれを定期的に買い替えないといけないと いうことがあるわけです 例えば学校や大学が タブレットを 数年ごとに買い替えていくということはこれまでの 学校の中の支出負担にはなかったことですから それが本当に 学校の中のある意味支出として 納得できるのかというとこれは非常に難しいところです これに対するひとつの解決法として BYOD(Bring Your Own Device)という概念があります これは、学校や大学がその教科書や教材を閲覧する端末を 用意するというのではなくて学生個人が端末を持ち込んで それを学校の中で使うと ということです しかしこれについてもいくつか問題があります 例えば 生徒がバラバラのメーカー、バラバラのOSのデバイス を持ち込むと それぞれに応じた教材や教科書を 個別に用意する必要があるわけですね そういうものラインナップとして学校側や大学はきちんと 用意するということが 時に難しくなる そうなると 生徒によっては用意した教材にアクセスできないという ことも起こり得るわけです また、オープン教材にアクセスするためには基本的に インターネット接続が必要なので 学校や大学の中でネットワークを 拡充することが不可欠です このための投資というのが欠かせないかと思います また、学校側が管理するわけではなく 生徒個人もしくは家庭で管理しているデバイスを 持ち込むのでそれぞれに どういうふうなセキュリティーポリシーが 適用されているかきちんと管理がされているかという ところをなかなか 教育機関の方で把握することが難しいわけです 例えばそのことによってひとりの生徒の端末が なにかコンピュータウィルスに侵されている時に それが学校の中で簡単に広がってしまうと そのような危険性もあるわけで このような問題に対していかに対応するかということが 特にこのBYODについては課題として残っていると いうことだと思います