この講義では オープンエデュケーションの課題について その中でも、学習コミュニティとMOOCに関する 内容について 解説をします この講義の学習目標は こちらの3つです 1つ目が、オープンコースウェアの活動が抱える課題について 説明できること 2つ目が、学習コミュニティの認知や活動の持続性に関する 課題について 説明できること 3つ目が、MOOCの抱える課題について 説明できることです まず学習コミュニティの抱える課題、限界について 解説をしたいと思います 第1週目の講義でですね オープンスタディやウェスタン・ガバナーズ・ユニバーシティ のような学習コミュニティの中で学び かつ、大学の単位が取れるというような 事例を紹介してきましたが これについても色々まだまだ課題があると いうのが現状です 1つ目が、社会認知の問題です つまり、このような学習コミュニティで学んだ学びそのものが 社会の中できちんと評価されるかという問題です このようなものをある意味裏付けるために デジタルバッジというものを使っているんですけども 今度はこのデジタルバッジ自体が 社会の中で認知されるかという問題があります 例えば、第1週で解説をしたオープンスタディですが こういう中で例えば数学や物理について 単純に学ぶだけではなくて 人に教えるということも時には求められるでしょうから そこの学びというのは ある意味通常の一方向的な学びよりも より深いものがあるかもしれません ですけどもそういう経験をですね、きちんとなにか 例えば大学に入るとか、何かの専門職に活かすという時に 人に説明する、示すということはなかなか難しいわけですね このために 例えばデジタルバッジでは単純にその人がこういうふうな コースを修了しましたというだけではなく この人はこういうふうな活動をこういう期間しました のような、その人の学習経験をバッジのリンク先として 示すような工夫も取り入れられているわけです これについては、様々なバッジについての 使い方の工夫ですとか そのようなバッジを使う学習環境の広がりがありますので 今後のある意味社会認知がどう変わっていくかというところの 変化をみていくしかないのかなと また、そういうところで より十全な学びを生み出すために 様々な学習コミュニティのある意味運営者の努力が 必要ということかと思います もう1つの問題が 大学についての認証評価 アクレディテーションです これも1週目で解説をしましたが 特に米国の場合は いくつか大学の認証機関というものがありまして それが各大学の認証評価をすると その認証評価に通ったところが 学位を発行する権利を取得できるという 仕組みになっています この中で、ウェスタン・ガバナーズ・ユニバーシティや ユニバーシティ・オブ・ピープルというところは 認証評価を取得しているので 大学の学位を出せるというふうな 仕組みになっているわけです かつて、ユニバーシティ・オブ・ピープルは 認証評価を持っていなかったので 持続性に懸念がもたれたわけですが これを取得したということでそこの部分は解決されたと 言えるかもしれません しかし一方で、そのようなオンライン大学もしくは 非常に学費が安価で、かつ新興の大学の学位というのを 伝統的なトップユニバーシティが出す学位と 同等にみなすかというのは非常に難しい問題です これは、決してこのようなオンライン大学における 学びというのに欠陥があるということではなくて そういうものは社会の中で評価されるということが 問題になるわけです つまり、社会の中でこのような オンライン大学で埋め合わせた単位であるとか 学位というのが どのように評価されるかというのは 大学が決めるわけではなくて、社会が決めるわけですね これは社会評価をある意味見守っていくしかないという 部分もあるかもしれません 高等教育というのは ある種この「シグナリング」の効果があると言われます つまり、大学を卒業して学位を取った ということが その人がある知識や技能について 十全なものを身につけているという 証明になっているということです こういうものを取ること自体が 近年の例えば「非伝統的」な学生の増加ですとか 知識自体のサイクルが非常に早くなっている などの状況を踏まえると なかなか難しいということもあると思います なので、ひとつの望むべき形としては このようなフォーマルな学びと インフォーマルな学びですね つまり、既存の伝統的な大学と このように、新しい学習機会を作っていって 伝統的な学びをある種、補っていく もしくはその共存共栄できるようなものが 両者連携していくと こういうものが望ましいのかなというふうに 私自身は考えています 次の課題は 活動の持続性です これは、オープンエデュケーションの活動全般に 言えることですが 活動資金を寄付財団などの外部資金に 頼っているということです つまり、これは当然のことなんですけども 教材や教育機会を無料で公開しているので それに対する収入というのは基本的にはないわけです なので、こういう活動を続けるための 収益モデルというのは 基本的にはないということです つまり、このような無償で提供している活動が 社会に対してこれだけの価値を提供しているということを ある意味、寄付財団や政府に対して 定常的に示すということでまた次の補助金を得ると このような活動をしていくしかないと いうことになります これは現状においたMOOCについても同様です CourseraやUdacityなどのMOOCプロバイダは ベンチャーキャピタルからの多大な出資を受けています また、edxのようなMOOCのコンソーシアムも 各大学がですね かなりの金額をそれぞれお互いに出資をして 活動を立ち上げているという経緯があります もちろんMOOCについても ビジネスモデルを構築するというふうな 考え方がいくつかあるわけですが そういうものが今後機能するかということが ひとつの継続の鍵になってくるということです MOOCに関しては、いくつかビジネスモデルが 検討されています 1つが、受講者からの小額徴収です 例えばCourseraは 本人認証付きの認定証 「シグネチャトラック」 というものを発行し 受講生に対し、数十ドルの手数料を徴収しています Courseraは2013年に このような認定証、修了証による収入が 1億円を超えたという発表をしましたが 例えばこれに対して Courseraはこれまでベンチャーキャピタルから受けた出資金 これは80億円を超えていると言われますが このようなものと釣り合うかというところは 議論があるところです また、MOOCプロバイダUdacityは 学習者支援のために チューターをつけると それを有償で提供するという発表をしています このような学習支援の部分で また受講者から小額に徴収していくということも ひとつのビジネスモデルとして検討はできるわけです もうひとつのビジネスモデルが 優秀な受講者の斡旋です 現状、CourseraやUdacityは 受講者の中で非常に優秀な学生を GoogleなどのIT企業に紹介するということをやっています その時の紹介料を企業側から徴収するということを やっているわけですね これは、企業にとっては非常に魅力的な選択肢で つまりこのリクルーティングのツールとして MOOCプロバイダが成り立っていると なので、そこに対して 何かの斡旋料を払うということは ひとつあり得るモデルかなと思います これについても、先程の小額徴収と一緒ですが どれぐらい大量の受講者を集め その中から優秀な学生を探すことができるかと いうところにかかっているかと思います 3つ目は、教材販売です これはCourseraの契約形態に ひとつ関係をしているのですが Courseraは、大学が提供した教材の 二次利用権を持っていると言われています なので、これはひとつの想定ですが Courseraがそのような教材をなにかカスタマイズして 例えばカレッジに向けて 反転授業の教材として販売するみたいなことも モデルとしては成り立つわけです このようにいくつかのビジネスモデルが検討されていますが 現状、まだMOOCプロバイダは立ち上がって 間もないということもあって ビジネスモデルの確立には至ってないというのが現状です 4つ目の課題は MOOCの教育効果です これは第2週の講義でも紹介した通り MOOCは現状修了率が非常に低い 10パーセント程度と言われています また、このようなオンライン教育で 学習意欲を持続するということがなかなか難しいという 課題はMOOCにおいても共通です つまり、これまでも遠隔教育やeラーニングにおいて 学習者の学習の維持、リテンションというのは 常に課題になってきたわけですけども MOOCについても全く同じことが言える かつ、これまで例えば大学がeラーニングで 果たしてきたような 学習支援、例えばメンターをつける等々ありますけども こういうものがまだまだ不十分ですので 修了率が非常に低くなっているという問題があります これに応える形として なんらかの学習者に対して動機付けを 促すような方法を考案する必要があると 例えばUdacityは、参加者が例えば自分の友人とか 近くに住んでいる人とチームを組んで ひとつの講義を受講するようなことを進めた そういうキャンペーンをやった時がありました つまりこのように既存の人の繋がりを 上手に使いながら コースを完了する率を上げていくみたいな ことも可能なわけで 例えば、Courseraが運営しているMeetup いくつかそのようなオフラインでの繋がりを 上手に使いながら学習意欲を維持するということも 考えられます もちろんこういう方法も これまで遠隔教育やeラーニングにおいて いわゆるスクーリング 実際に学生同士が対面で会う機会を作らないといけないと この重要性を説いていったことと ほとんど変わらないわけですけども つまり、同様の問題がMOOCにもあるということです また、MOOCについては剽窃(ひょうせつ)行為をいかに防止するかと いうことも課題です つまり、全ての教育その中の試験の部分も オンラインで済ませるので ここで例えば受講者の成り代わりみたいなことが 起きかねないわけです これの対策として例えばedxは外部試験サービスを 活用すると これはそういう試験サービスをする 企業というのがありまして そこのある意味試験サービスをやるなにか建物 もしくはその施設に行って そこで試験を受けるということで 本人認証を確実にしようというふうな試みをしています また、Courseraについては 以前ご紹介したとおり シグネチャトラックという中で 受講者の写真付IDを提示させるですとか キータイピングの癖を見抜いて 成りすまし防止に役立てるようなこともされています このように剽窃行為の防止をするような取り組みというのも MOOCでの学びをある意味社会できちんと 認知させていくためには 欠かせないのかなという部分です 今週のまとめに入ります 今週は、第1週・第2週と解説をしてきた オープンエデュケーションの活動、またMOOCについての 内容を基にですね これを支えている背景について 解説をしました 背景には大きく分けて、理念的側面と 実利的側面がある この両面において活動が社会の中 もしくは大学自身、様々な教育機関の 意思によって支えられているということです また、このオープンエデュケーションの活動には 様々な課題があるということも確かです 例えばオープン教材の制作 オープン教材を公開するウェブサイト 学習コミュニティや活動の持続性 また、近年広まってきたMOOCについても 様々な課題があるということについて お分かりいただけたかと思います