この講義では オープン化が教育に与えるインパクトについて解説します この講義の学習目標はこちらの2つです 1つめが オープンエデュケーションの活動の前提となる インターネットの持つオープン性の特徴について 説明できること もう1つが このオープン性が教育に与える影響について 説明できることです いわゆるオープン化というのが教育にどういうふうな 影響を持ったのでしょうか そもそもオープンエデュケーションの活動にとって この活動の場がネット空間であるということは 非常に重要な前提なわけです と言いますのも インターネットというのは誰しもが創意工夫によって 新しいシステムや用途など いろいろな価値を付け加えることができるわけですね つまりインターネットそのものが仕組みとして 多様な知の結合を促す構造となっているということです と言いますのも このオープンエデュケーションの活動が繰り広げられている インターネットそのものがオープンな構造を持っている ということなんです こういうものをオープン・アーキテクチャと呼ぶことがあります オープン・アーキテクチャの1つの特徴は モジュール構造なんですね つまり インターネット上に存在するさまざまな技術やサービスが 標準化されていて かつそれがモジュールという形で相互に接続できると このことによって新しい価値を付け加えることが 容易になるということなんです このオープン化が 教育にもたらす影響についても 国領先生の、これは別の本になりますが 「オープンソリューション社会の構想」という内容の本を 引きたいと思います この本の中で国領先生は インターネット上では 流通する情報の無償公開が起きやすいと 述べています と言いますのも インターネット上でやりとりされる情報 いわゆるデジタル財は 複製や流通のコストが低いということなんですね 逆に言うと課金コストが高くなるということです これは少し前に話題になったさまざまな 例えば違法ファイルの共有ですとかそういうものの ある種悪質な流通などに代表されると思いますけれども つまりその課金をして 何かを流通させて不正利用を妨げるということが このインターネット上である種コストがかかるわけですね さまざまな 認証であるとか不正行為を防止するシステムを作る ということがインターネット上ではどうしても手間がかかると 価値生産における連結の経済性というのがあります これは情報を組み合わせることで 情報の価値が高まることなんですが 先ほどのモジュール構造の 例を引く通り インターネット上ではこのような情報の組み合わせが 起こりやすいので 情報の価値が高まりやすいという特徴もあるわけです このような無償デジタル財を公開する動機というのは 何なのでしょうか これについては2つのものが挙げられています 1つが奉仕的な動機 もう1つが商業的な動機です つまり無償デジタル財を インターネット上で公開する ネットワーク上で共有するということが 社会的なある種交換や贈与の考え方で包括できる もしくはそれがお互いに利益をもたらす つまり互恵的なインタラクションを持つということがある もう一つの商業的な動機としては 広告収入や抱き合わせ販売 試供品の提供 いわゆるフリーミアムモデルというのをご想像いただいたら いいと思いますが こういうふうな動機によっても支えられているということです つまりこのようなインターネット上ではですね 情報を広く 無償で公開することによってビジネスモデルを成り立たせる ということが効果を持つ 逆に言うと すべての活動を 課金という形で縛っていくということ自体が 逆にコストの高騰を招いてサービスとして維持しにくくなると いうことなんです このような内容はこれまで見てきた オープンエデュケーションの活動を振り返るときに 非常に大きい意味を持つと思います つまりこのオープン化というのは 今のオープンエデュケーション、教育の中での 大きい影響を持っているということなんですね 例えば教育コンテンツを無償で公開するというのが オープンエデュケーションの大きい特徴ですが これがメリットを持っている 例えば オープンエデュケーション活動が広まる前にあった FathomやAllLearnのような 有料で教材を販売するというものがうまくいかなかった それを受けて教材を無償公開すると だけれどもそのことによって例えば大学 教育を宣伝する このように つまり無償デジタル財を使って新しい価値を生み出す ということが可能になるわけです つまりこれは大学の認知度を高めるために オープン教材を使うというある種の新しいデジタル財の 使い方だとも言えると思いますし この方法が妥当であるということが 先の考えで裏付けられているかと思います つまりこのようなオープン化 もしくはインターネットの持つ性質というものが オープンエデュケーションの活動が広がった背景だと 考えられるわけです またオープン教材を再利用する このメリットについても同様に説明できます つまり連結の経済性 つまり あるデジタル財を組み合わせる、例えばオープンになった教材を 組み合わせるということによって 価値が生み出されるということがあるわけですね つまり複数のオープン教材を組み合わせることで 新しい教材を作る これはいわゆる教材の再利用に当たるのだと思いますが これによってより価値の高い教材を作る 具体的に言うと より多様な学びやそのさまざまなレベルの人に対する 教材を用意できるということですね こういうふうなメリットがあるということです また、ネットワーク上の教材交換 これについては 教材の価値が増大することで参加者全員の便益が増す という状況もあります つまり ネットワーク上でいろんな方がさまざまな教材を作って それを交換し 場合によっては組み合わせて新しい教材を作ると こういう活動がうまくいけば これは教材を作ったそれぞれの人に対してより豊富で 質の高い教材が手に入るという 利益をもたらすわけです このときに必要なのが教材のモジュール化です つまり教材同士が組み合わせやすい構造を持っていないと 教材の再利用を促されませんので そのときに例えば 第一週目で紹介したConnexionsのような 教材が素材のモジュールとして格納されていて 組み合わせや再利用が容易であると このような仕組みが 非常にメリットを持つのかなと思われます また オープン教材を公開する奉仕的な動機についても 同様の説明ができます デジタル財をお互いに共有することが 様々な道義に支えられているというお話がありましたが これが教材であることも このような 現象の後押しになると考えられるわけです すなわち教育はそもそも奉仕的な行為でありますし 互いに教え合うということ自体が この学習コミュニティの中の参加者の中にも 互恵性、お互いにメリットをもたらすわけです つまりオープン教材を作るだけではなくて それをお互いに再利用して新しいものを作り合ったり そういうものを使ってお互いに教え合うと いうこと自体が非常に互恵的なインタラクションである このような活動自体がさらに相互貢献を生み出す というような活動だと言えるわけです