この講義では オープンエデュテーションがもたらす多様な学びについて 解説します 学習目標は こちらの2つです 1つめがオープンエデュケーションの活動の 現代社会における人材育成との関わりについて 説明できること 2つめは オープンエデュケーションの活動が 現代的な知的活動に及ぼす可能性について 説明できることです ここではオープンエデュケーションと 生涯学習の繋がりについて考えてみたいと思います 現代社会において生涯学習が 重要性を増していることには 議論の余地はないかと思います つまり 学校や大学において 生涯にわたって 社会で生き抜くために 必要なすべての知識技術を身につけるということは 既に困難になっていると そのために 社会の中で 例えば最新技術 新しい知見について 働きながら学び直す、このような学び直しの教育機会が 不可欠であるということです こういうときにオープンエデュケーション というのは可能性があるのではないでしょうか つまり例えば何かの専門的な知識を学び直すというときに 何か働いている会社を辞めて大学に通うみたいな ことはかなり難しいわけですね もちろん社会人入学として入ることできるわけですが 仮にそういう状況も難しい場合には 教育制度にある意味頼らない形を考えて 適切な教育コンテンツや教育者、学習環境があれば 誰であれ学び合う直すことは可能だという考えの下で オープンエデュケーションの機会を使うということも できるのではないでしょうか このときに重要となるのが バッジシステムや修了証だと思います これは第1週目の授業のオープン・スタディなどの 議論でもあった通りオープンエデュケーションによる 学びの成果を可視化する そのために例えばモジラ・オープンバッジのような 第三者機関が バッジを提供する仕組みを提供しているというのが 非常に大事だということです つまりこのような仕組みを上手に使うことで オープンな教育環境の学びというのを きちんと社会の中で見せることができる 成果を可視化するということが意味を持つわけです また教育機関に限らず社会の様々な主体、様々な方が 学習環境を作ったり 学びの成果の認定を行うこともできるでしょう 例えば 今起きているOERを使った学習コミュニティや MOOCなども教育機関ではないわけですね さまざまな教育ベンチャーや さまざまな非営利団体が学習環境を作っている その中でバッジシステムなどを使って 能力認定をしているわけです また私が考えるに このような場所では 既存の教育観ではなかなか始められないような先進的な 内容や方法を試せると思うんです つまりこういうふうな新しい学習環境でやっている 学び方、学びの内容というものが 将来的に教育機関における教育の先駆けにも なるのではないかと思います このような状況の中で 私はMOOCの中でもcMOOCの持つ可能性に 注目しています cMOOCというのは 自主的な知の学び場と言えるでしょう つまり 何か確立された知識を学ぶのではなくて 新たに知識を構築するような学習コミュニティです これはcMOOCの起こりとなった いわゆるCCKと呼ばれる授業を 想像していただければいいのですが Connectivismという新しい概念について みんなで考えるということをやったわけですね そしておそらく MOOCのタイプによって 適した学びがあるのではないでしょうか つまり例えば物理学の基礎、心理学の基礎のように 体系的に教えることができるような内容は CourseraやedXのようなxMOOCで学ぶ その一方で まだ明確な知識体系は存在せずに、それをある意味 探索的に考える段階にあるものについては cMOOCの形をとると またcMOOCの場合は 組織を超えて共同的に学ぶ、そういう学びを促すのも 可能だろうと 例えば何かの先端技術について 大学の教員と民間企業の専門家がともに協同的に学ぶ そういう学習コミュニティを作るときに 何かきちっとしたMOOCを作ろうというよりも cMOOCなどのような非常に緩い学習コミュニティで ともに新しい知識について知を構築していくということは 非常に有益なのではないでしょうか また cMOOCは現代的な知と非常に相性がいい と言えると思います 現代の知というのは 相互編集がなされる 相対的・批判的な知だと言えます これはWikipediaに代表されるように様々な人が 知識構築に携わっていって相互に お互い編集をし合っていく 常に更新をされていくということですね つまり 何かを教えるというときも教えるべき 知識の内容や体系が頻繁に変わっていくと こうなると 何か定められたカリキュラムを作ってその中で系統的に 教えるということが難しいわけです このときにcMOOCの長所を活かせるのではないでしょうか つまり短いサイクルで新しい発見や修正があると それを常に更新していくような現代的な知であれば こういうものの参加者が ともに共同的に考えながら新しい知を整理していく そこに付け加えていく、もしくはそれを使った 問題解決について一緒に考える そういうような学びの場を作れると思います このような可能性を精神的に問うたのが イヴァン・イリイチだと思います イヴァン・イリイチは著書、脱学校の社会の中で 教育のための網状組織というものを提案しました 教育制度の枠にとらわれない学び方の中で 必要に応じて臨機応変に学ぶと まさにこのような学び方はcMOOCに近い つまりコンピュータやインターネットによって作られた ネットワーク、そういう網状組織の中に 人が集うことで共に学んでいくと こちらの図はcMOOCの紹介のときに挙げた 人々がどういうふうなツールやメディアを使って互いに 繋がり合ったかというものを可視化したのですが まさにこういうものがイリイチの提唱したような 網状組織そのものとも言えるかもしれません では、このような オープンエデュケーションの取り組み、特徴 1つの長所というものは 世界でどう位置づけられているか またそれが 日本の中で広まるためにどういう課題があると 言えるのでしょうか 世界の状況を見ると 高等教育へのニーズが上昇しており かつ教育機会が不均等であるという ことに対する不満もあると こういう中で オープンエデュケーションがある種の課題解決の方法として 注目されているという現状があります 一方、我が国においては 高等教育の抱える問題というのは これは良くも悪くもまだ顕在化しきっていない ところがあるわけですね かつ日本においては教育制度も 現状十分に整備をされていて かつ非伝統的な学生 つまり働きながら大学に通う もしくは家族を養っている学生というのは まだまだ比較的少ない状況です かつ、オープンエデュケーションの様々な活動 例えばオープンコースウェア オープン教材制作、こういうものは 大学においては大学自前の資金でほぼ賄われている という状況もあります また オープンエデュケーションの活動を推進するにあたって 日本の中ではさまざまな障壁が存在します 例えば先に解説をした 著作権に関するもの フェアユース法のようなものがない または インターネット上に著作物を置くことそのものが 著作権法の例えば複製権や 公衆送信権を侵害すると いうふうな考え方もあります このように日本の中では ある意味課題解決のオープンエデュケーションというのが 加速しにくい前提があるわけですけども とは言え ある意味このグローバルでフラットなネットワークである インターネット上で起こる学び この中でこれを前提となるデジタル化・オープン化の流れは 止まらないと考えます なので、これは私の考えですが ある種、課題解決のためだけではなくて 学習環境、今ある例えば大学 学校教育制度含めてですけども こういうものをより良くする、より豊かにするための オープンエデュケーションのあり方 というのも日本の中では深く考える時期に 差し掛かっているのではないでしょうか