2013/5/19にScratchDayTokyo2013に参加したので、個人的に注目していたワークショップ「Scratchと英語で絵本の世界を体験しよう!」を見学して感じたことをレポートする。

このワークショップは、

  1. 絵本「Papa, Please get the Moon for me」の読み聞かせ
  2. 絵本に出てくる主人公の動きを英語で発音しながら真似る
  3. Scratch+Kinectによる絵本の世界で主人公となってキーワードとなる動きをKinectに向かって行うことで物語が進行することを体験
  4. 自らを写真で撮影するなどして素材を取り込み、自分自身を絵本の世界で動かす体験をする
  5. 作品発表

というプロセスで実施されていた。

1〜2のプロセスを見た際に自分の子どもが受けている英語レッスンを思い出した。子どもと共に行う自宅での英語レッスンでは言葉やフレーズと関連するジェスチャーをしながら発音する。このようなメソッドを採用している子ども向け英語教室はそれなりにあるだろう。

このワークショップでは3のプロセスで、+αとしてKinectによる絵本の世界の再現を行なっている。子どもが絵本の世界に主人公として入り込める工夫であると感じた。

絵本の主人公となるようにうまく演じようと子どもは夢中になると思うが、ここで忘れてならないのはジェスチャーと連動した英語の発音を忘れないようにするということであろう。中には忘れてしまう子どもいるだろうが、ファシリテーターが適切なアドバイスを与えることで1〜2のプロセスで実施したことを3においても実践できるように配慮することが重要であると考えている。

そのような配慮を行うことで、仮にKinectによる動作の再現がうまくいかずジェスチャーの修正を何度もすることになっても、同じ動作を繰り返しながらその英語のセリフを繰り返し口にすることでジェスチャーとその言葉の結びつきがより強化されるのではないかと感じた。  言語学習においてはこのような体の動きと言葉やフレーズとの連動を用いる手法が良く使われているが、人のコミュニケーションにおいては伝えようとすることを身振り手振りによって強調するようなことが行われたりしていることからも分かるように、ジェスチャーは言葉の一部(言葉そのもの)として捉えることができる。

人間の歴史の中で、言葉が先か、ジェスチャーによるボディーランゲージが先かは分からないが、これらが密接に関わっていることは確かである。

ScratchDayTokyoの会場では他に海外で日本語を指導している方のデモ展示なども行われており、その日本語教育においてもKinectを活用してひらがなを体を使って大きく書くようなアクティビティを行なっている実践報告がLTで紹介された。

ところで、言語学習の中でジェスチャーを活用することが多いが、人によっては恥ずかしがって大きなジェスチャーを行わないケースもあるのではないかと思う。そのような場合にScratch+Kinectによって大きなジェスチャーを誘発させ、同時に発音を行うことで言語学習効果を向上させられる可能性があるのではないかと考えている。

なお、4〜5のプロセスでは子ども達がScratchで自分の写真を絵本の世界に取り込むということを行なっていたが、これだけ短時間のワークショップの中でこういった活動が実現できたのは、Scratchのブロックプログラミング環境において「Syntax Error(文法エラー)」が存在しないために不毛な間違い探しに時間を費やすことなくロジック作成に取り組めるのと同様に、素材となる写真や絵や音などを容易に取り込んで加工できる環境が整っていることがCreativeな活動をうまく支援しているものと思われる。

ScratchDayへの参加は今回が初めてであったが、各セミナーやLTの内容はどれも非常に興味深い内容となっており、また子ども達がハッカソンでScratch2.0の新機能を使って制作した作品も素晴らしかった。これらの作品のリミックスで更なる発展があることを期待したい。

今後、Scratchなどを利用したワークショップを企画するに当たっては、英語などの言語教育との組み合わせでどのような実践ができるかを検討していきたいと考えている。  その他、未共有のものも含めていくつか自分でもScratch2.0の新しい機能(ビデオモーションやクローン)を使ったものを作成した。

MathQuiz
http://scratch.mit.edu/projects/10361078/

Bubbles
http://scratch.mit.edu/projects/10384454/ 以上。