Scratchによって作品を制作し、他の人の作品を見て、以下のScratchの特徴を実際に体感することができました。

  • 目標は「みんな一緒」でなく「みんな違う」
  • 作品は「完成」ではなく「洗練」
  • 作品の洗練は「教えてもらう」でなく「盗む」

まず、共有されている作品の多様性に表れているように、参加者一人一人が、各自が作りたい作品を目標として制作している印象を受けました。今現在受けている大学の授業や高校まで受けてきた授業は、学生・生徒の自主性や主体性を意識した授業形式もありましたが、1つの授業の目標は1つだったように思います。よって、目標の多様性はScratchという教材の特徴と考えます。   目標が1つではないからこそ、「完成」が不明確な点も特徴と言えると思います。もちろん完成形として作品は提出されることが多いかと思います。しかし、実際に作品を作ってみると、私がプログラミングに慣れていないからかもしれませんが、初めから想定通りのものはできませんでした。そこで、動作を確認しながら、試行錯誤して想定している動作に近づけていきました。いつでもプログラムは編集可能という仕様もそれを助長していると思います。一応は完成形とするけれど、それは常に洗練可能であり、洗練には終わりはない、そんな特徴があると思います。

考え方によっては、常に提出された作品は「プロトタイプ」であり、完成した閉じた作品ではないと言うことができるかもしれません。このような考え方は私の専門であるアートの領域でも議論されており、デューリングの「作品からプロトタイプへ」などの文章が参照されることがあります。

実際に作品を洗練させていく際に参考になるのが、他の人の作品の中身でした。つまり、誰かから方法を手取り足取り教えてもらうというよりも、他の人の作品を見て、面白い作品に触発されて、その中身を見て、自分の作品に生かしていくということです。

以上のように考えると、Scratchは自学自習ができる人に向いた教材なのかもしれないと思います。なぜなら、一人一人が目標を設定し、他の人の作品から技を盗んで制作活動を進める場合、必ずしも集団である必要性がないからです。むしろ自分の自由に好きなだけ時間を使って取り組める自学自習のほうがやりやすいかもしれません。

逆に、Scratchを集団学習に用いる場合、①まとめ役(主に教師と考えられるがその限りではない)が共通の目標(完成形)を設定する ②参加者が各自で目標を設定することのみ指示され、わからないことを周りに聞きながら各自の目標達成を目指す のような形が考えられるのではないかと思います。

Scratch day に参加できれば、実際に活用される方法が見られたはずなので、参加できず残念でした。もしも参加された方がいれば「集団学習においてどのように活用されていたか」をお聞きしたいです。